遺伝カウンセリング外来GENETIC COUNSELING

よくある質問

遺伝子とは?

遺伝子は、ヒトの体をつくる設計図です。
ヒトの体は約37兆個の「細胞」からできており、細胞の中の「核」と言われる部分に「染色体」が格納されています。「染色体」は、大きい順に番号が付けられており、1〜22番までの常染色体とX染色体とY染色体という性染色体から構成されます。「染色体」は、両親からそれぞれ1本ずつ受け継ぐため2本で1組となっています。性染色体は性別に関係する染色体で、多くの場合、性染色体の組み合わせが、XXであれば女性、XYであれば男性となります。
さらに、「染色体」は「DNA」が凝集されたもので、「DNA」のある特定の領域が「遺伝子」として働いています。「DNA」や「遺伝子」は、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)という塩基(化学物質)が規則正しく並ぶことによって機能しており、それぞれの遺伝子からタンパク質が生成されることで私たちの身体が機能しています。

遺伝性疾患とは?

遺伝性疾患とは、染色体や遺伝子の変化によって起こる疾患のことをいいます。遺伝性疾患=遺伝する(受け継がれる)疾患、とは限りません。遺伝性疾患には、染色体疾患、単一遺伝子疾患、微細欠失・重複症候群(ゲノムコピー数変化)、多因子遺伝性疾患などがあります。

親が染色体や遺伝子の変化を持っていて、それが子どもに遺伝する(受け継がれる)場合と、親には変化が認められませんが、配偶子形成の段階で、変化をもつ精子や卵子ができ、それらが受精することで、子どもにのみ染色体や遺伝子の変化が認められる場合もあります(新生突然変異といいます)。

どのような遺伝の仕方がありますか?

遺伝子の受け継がれ方と発症の関係(遺伝形式)には大きく分けて4種類あります。
一般的に常染色体上の遺伝子は、どの遺伝子も2つずつ(1組ずつ)持っています。これは両親から1つずつ遺伝子を受け継いでいるからです。

① 常染色体顕性遺伝(優性遺伝)…2つ持っている遺伝子の片方に病気の原因となる変化(病的変化)があると、発症する、もしくは発症しやすい体質になります。子どもには1/2(50%)の確率で同じ病的変化が受け継がれ、同じ特徴をもつ可能性があります。症状が出る可能性は、疾患の種類によって様々です。

② 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)…2つ持っている遺伝子の両方に病的変化があると、発症します。両親は2つ持っている遺伝子の片方に同じ病的変化を持っている保因者の可能性があります。両親が保因者の場合、次の子どもが同じ疾患をもつ確率は1/4(25%)ですが、1/4(25%)は病的変化を1つも受け継がず、1/2(50%)は両親と同じ保因者になります。

③ X連鎖遺伝…染色体のうち性別に関係する染色体には、X染色体とY染色体があります。多くの場合、女性ではXX、男性ではXYの組み合わせで持っています。この遺伝形式では、X染色体上にある遺伝子に病的変化を持っていた場合に、男性(XY)のみが特徴が出やすくなります。女性(XX)で病的変化を持っていた場合は保因者となり、子どもには1/2(50%)の確率で同じ病的変化が受け継がれますが、さらに男の子であれば(1/4(25%))同じ特徴が出やすくなります。疾患によっては保因者の女性(XX)でも、中には軽微な症状を呈する方もおり、症候性保因者といいます。

また、X連鎖性疾患の中には、X染色体上にある遺伝子の片方に病的変化を持っていた場合に特徴が出やすくなる疾患もあります。つまり、女性(XX)では特徴が出やすくなりますが、男性(XY)では多くの場合、生命にかかわり生まれて来ることが難しくなります。

④ 母系遺伝(細胞質遺伝)…細胞の中には、ミトコンドリアという細胞小器官が含まれており、独自のDNAや遺伝子を持っています。配偶子(卵子や精子)にも、ミトコンドリアは含まれていますが、受精卵が生じる時に精子のミトコンドリアは消失し、卵子のミトコンドリアだけが受け継がれます。その後、受精卵の分割・増殖とともにミトコンドリアもランダムに分割・増殖します。つまり、変化のあるミトコンドリアDNAの割合が変動します。疾患(ミトコンドリアDNAが原因となるミトコンドリア病)にもよりますが、変化のあるミトコンドリアDNAの割合が疾患の発症と関係してきます(ただし、症状の有無や程度の予測は困難です)。

遺伝子診断(遺伝学的検査)とは?

遺伝性疾患の原因として明らかになっている遺伝子を解析することで、その遺伝性疾患であるかどうかの診断を確定させることです。一般的には採血によって検査をします。

遺伝子診断(遺伝学的検査)ではどのような遺伝子を調べるのですか?

患者さんの症状から、ある遺伝性疾患が疑われた場合、その遺伝性疾患の原因遺伝子を調べます。原因遺伝子に病的変化が検出された場合、その遺伝性疾患を持っているかどうかを確定させることができます。確定させることによって、その将来の見通しがついたり、その疾患に適した医学的管理が可能になったり、血縁者の遺伝についても備えることができることもあります。

遺伝子診断(遺伝学的検査)に健康保険は使えますか?

健康保険が適用される遺伝学的検査もあり、その種類は増え続けています。健康保険が使用できない遺伝学的検査については、実施している検査会社や研究機関があれば、自費診療または研究として検査を依頼することは可能です。

出生前検査とは?

出生前検査には、①非確定的検査(非侵襲的検査)と②確定的検査(侵襲的検査)があります。①非確定的検査は、流産のリスクがなく、胎児疾患の「可能性」を評価するために行います。超音波検査や母体血清マーカー検査(クアトロ検査、トリプルマーカー)、新型出生前診断(NIPT)などがあります。②確定的検査は、腹部に針を刺すことで、胎児の細胞を回収する検査です。流産のリスクもあり、胎児がもつ染色体疾患の診断を確定させるために行います。羊水染色体検査と絨毛染色体検査があります。しかし、これらの染色体検査で明らかにできるのは限られた一部の疾患のみです(先天性疾患の25%)。さらには、たとえ利用可能なあらゆる検査をしたとしても、すべての疾患を調べることは不可能です(赤ちゃんが確実に健康に生まれてくる保証ができる検査はありません)。

着床前診断とは?

妊娠前に、体外で受精させた胚(受精卵)の染色体や遺伝子の検査を行い、疾患をもたない可能性の高い胚だけを選択し、子宮に移植します。現在、着床前診断にはいくつかの種類があります(PGT-M; 単一遺伝子疾患の病的バリアントの有無を調べる検査, PGT-A; 染色体の数の変化を調べる検査, PGT-SR; 染色体の形の変化を調べる検査)。しかし、それぞれに条件があり、誰でも受けられる検査というわけではありません。

非発症保因者診断とは?

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患やX連鎖性疾患の非発症保因者であるかどうかを診断する検査です。非発症保因者とは、染色体や遺伝子の片方に病気の原因となる変化を持っているけれども、生涯にわたって疾患が出現しないと考えられる人のことです。しかし、X連鎖性疾患で女性であっても、疾患によっては何らかの症状が出現する人もおり、この場合、症候性保因者といいます。保因者診断の実施には、検査前後の適切な遺伝カウンセリングが必要です。

発症前診断とは?

常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患で、その時点では症状のない人が遺伝性疾患と診断された血縁者の遺伝情報*1をもとに「将来の発症可能性」を調べる検査です。発症前診断の実施には、検査前後の適切な遺伝カウンセリング*2が必要です。

  • *1 当院では、血縁者(発端者)の方の検査結果報告書を提示していただく必要があります。
  • *2 当院では、疾患等によっては複数回の遺伝カウンセリングを実施条件の一つとしています。

認定遺伝カウンセラー®️とは?

認定遺伝カウンセラー®️とは、遺伝医療を必要としている患者さんや家族に適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポートを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職です。
認定遺伝カウンセラー®️は、医療技術を提供したり、研究を行う立場とは一線を画し、独立した立場から患者さんを援助することが求められています。最新の遺伝医学の知識を持ち、専門的なカウンセリング技術を身につけており、倫理的・法的・社会的課題(Ethical-legal-social issues; ELSI)に対応でき、主治医や他の診療部門との協力関係(チーム)を構成・維持できる存在です。
(認定遺伝カウンセラー制度委員会HPより作成)